
ウィスカは、電子機器の信頼性を脅かす微細な金属結晶で、その発生は短絡や故障の原因となりかねません。特に、ねじ製品などでのウィスカ発生は、製品の安全性に大きな影響を与えます。この問題に対して効果的な対策を講じることは、製品の信頼性を高めるために非常に重要です。この記事では、ウィスカの発生原因とそれに対する具体的な対策方法について解説します。(但し、ウィスカ発生の根本的なメカニズムは解明されておらず、すべてのケースに明確な対策がないこともご理解下さい。)ウィスカ対策を行うことで、製品の信頼性を向上させ、安心して使用できる環境を整えましょう。
ウィスカとは?
ウィスカとは、金属表面に自然発生する微細な金属結晶の突起物のことで、これらは数ミクロンから数ミリメートルの長さに成長することがあり、電気的に導通する特性を持つため、電子機器において短絡や回路の故障を引き起こす可能性があります。ウィスカの主な発生メカニズムは、亜鉛めっき層に生じる残留応力で、特に圧縮応力であると言われています。この圧縮応力により、亜鉛の分子が元の結晶構造を保持できなくなり、応力を逃すようにひげ状の単結晶として再成長した突起物となります。ウィスカは圧縮応力や環境要因(湿度や温度)によって促進されることが知られています。ウィスカは一度発生すると、通常の肉眼では確認が難しく、予期しない時に電気的な障害を引き起こす可能性があるため、その成長を抑制することが重要です。ウィスカの発生を完全に防ぐことは難しいですが、材料の選択や表面処理の改善、環境管理を通じた対策が求められています。
ウィスカと温度の関係性
ウィスカの発生には、温度が重要な役割を果たします。温度変化が金属内に応力を生じさせ、その結果としてウィスカの発生が促進されることがあります。特に、温度が急激に変化する環境では、金属内部の応力が急激に増減し、それがウィスカの発生を助長します。例えば、電子機器が頻繁にオンオフを繰り返すと、その内部温度が上昇と下降を繰り返し、これがウィスカ発生を誘発する要因となります。また、一定の高温状態が続くと、金属内部の拡散現象が活発になり、ウィスカの成長を加速させる可能性も指摘されています。このような環境下では、金属表面の酸化や他の化学反応が促進され、ウィスカの成長条件が整いやすくなります。ウィスカ対策としては、温度管理が重要であり、適切な温度範囲を保つことで、ウィスカ発生を抑制することに繋がるとされています。
圧縮応力によるウィスカ発生イメージ

ねじのウィスカ発生イメージ

ウィスカが発生しにくい表面処理とは
錫-鉛合金めっき
・鉛(Pb)が応力緩和を促し、ウィスカを抑制できる。
・ただしRoHS規制により使用制限あり。
ニッケルめっき(Ni)/無電解Ni-Pめっき
・錫を使わないためウィスカの懸念がない。
・ただしはんだ付け性には工夫が必要。
金めっき(Au)
・貴金属で安定、ウィスカ発生報告はほぼ無し。
・コストが高いが接点や高信頼用途に多用。
その他にもパラジウムめっき(Pd, Pd-Niなど)、銀めっき(Ag)等、高価な材料を使用した表面処理や、 スズ-銅合金めっき(Sn-Cu)等の合金めっきも効果があるとされています。
ねじに使用されるメッキにおけるウィスカ発生状況
電気亜鉛めっき: ×
電気亜鉛めっきを使用する場合は、ベーキング処理を施すことをお勧めします。ベーキング処理は、120℃~200℃で数時間加熱をする処理です。熱処理を行うことにより応力が部分的に解放され、初期ウィスカの発生は抑制できる。とされています。但し、永続的な対策ではない為、注意が必要です。
錫めっき:×
錫めっきを使用する場合は、下地めっきとして銅めっきやニッケルメッキを行った上で錫メッキを施して下さい。下地めっきをすることで金属間化合物の成長が薄箔状に成長する為、内部応力を緩和すると考えられています。又、ビスマスや銀、銅等を錫に添加した錫合金めっきとすることでウィスカの成長を抑制する効果があると考えられています。
ニッケルめっき:〇
ニッケルめっきは、亜鉛を含有していない為、亜鉛めっき層における残留応力の心配がないことから安心してお使い頂けます。但し、電気亜鉛めっき等と比較すると耐食性の観点では落ちる為、配慮が必要です。
ゼロウィスカSによるウィスカ抑制について
ゼロウィスカSは、株式会社サンビックスが特許技術を保有している表面処理です。ウィスカを永久に発生させないことを目標に開発されており、特定のめっき浴の組成(成分、添加剤等)や工程管理により、ウィスカ発生促進試験での耐性が確認されている表面処理です。亜鉛めっき皮膜中にウィスカを発生させると考えられている内部応力を非常に低く抑える処理になっています。又、環境にも配慮されており有害物質の使用を抑えてRoHS規制にも対応する表面処理です。耐食性能も三価クロメート処理と同等ですので安心してご使用できます。問題点は、はんだ付け性で濡れ性が低い為、非はんだ部品向けの処理となります。その為、はんだ付けの必要がない、ねじ部品には最適なウィスカ対応表面処理といえます。
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