世の中には多種多様な締結部品が存在します。モノづくりの現場では、多数の選択肢の中から実際の“使用環境”に鑑みて使用するねじを選定する必要があります。一口に“使用環境”といっても、完成品のサイズ・形状、他の部品との干渉、振動の有無、天候、締結部品にかかる荷重、必要となる強度、などその構成要素は様々です。そこで今回は、“強度”という視点から見たねじの選び方をご紹介します。
ねじの強度とは
そもそも、ねじの強度とは何でしょうか?
締結用のねじは、おねじとめねじを締付けることによって締結されるものに締付け力を発生させ、その力を保持させる必要があります。そのため、締付け力に応じて適した製品を選べなければなりません。そこで、日本産業規格(JIS)では小ねじやボルトの強度区分について段階別に分類し、それぞれに引張強さや降伏点、硬さなどの機械的性質を定義しています。
材質によってことなる強度区分
ねじの強度とはで紹介したようにねじの強度はJISで定義されており、これは材質によっても異なります。ここでは、代表的な“鉄”と“ステンレス”の強度区分を紹介します。
(1)おねじ
①鉄(炭素鋼及び合金鋼)
“鉄”のおねじの強度は「4.8」、「10.9」などの表記で表されます。これらの数値は呼び引張強さ(ねじを引張って千切れるまでにかかる最も大きな力)と降伏点、又は耐力(ねじを引張って形がもとに戻らなくなる変形が始まる力)を表しています。
【例】強度区分10.9のボルトの場合
・「10」は呼び引張強さがその100倍の1,000N/㎟あることを示します。
・「.9」は1,000×0.9=900 N/㎟あたりが降伏点、又は耐力であることを示します。
【おねじ部品の強度区分】
強度区分 | 3.6 | 4.6 | 4.8 | 5.6 | 5.8 | 6.8 | 8.8 | 9.8 | 10.9 | 12.9 | |
d≦16 | d>16 | ||||||||||
呼び引張強さ 〔N/㎟〕 | 300 | 400 | 500 | 600 | 800 | 900 | 1000 | 1200 | |||
最小引張強さ 〔N/㎟〕 | 330 | 400 | 420 | 500 | 520 | 600 | 800 | 830 | 900 | 1040 | 1220 |
また、同じ強度でもねじの径によって耐えられる荷重は異なります。これは、太いねじの方が大きな荷重に耐えられることを考えるとイメージしやすいと思います。ねじの太さも考慮した強度は、最小引張荷重という形で表され、「最小引張強さ×ねじの有効断面積」で求めることができます。
②ステンレス(耐食ステンレス鋼)
ステンレスのおねじの強度は「A2-70」、「A2-50」のように表されます。これらは以下の表のように鋼種区分と強度区分を表しています。
鋼種 | オーステナイト系 | フェライト系 | マルテンサイト系 | |
鋼種区分 | 表記(一部) | A1、A2、A4 | F1 | C1、C3、C4 |
例 | SUS303、SUS304、SUSXM-7、SUS316 | SUS430 | SUS403、SUS410 | |
強度区分(一部) | 50、70、80 | 45、60 | 50、70、80 |
【例】A2-70の場合
・「A2」は上表のように鋼種区分を表します。今回の場合はオーステナイト系のステンレスであることが分かります。
・「70」は上表のように強度区分(引張強さ)を表します。今回の場合は70×10=700N/㎟となります。
ステンレスも“鉄”と同様にねじの径によって耐えられる荷重は異なり、最小引張荷重という形で表されます。
(2)めねじ
めねじに関しては「おねじの強度区分に合ったものを選ぶ」というのが一般的です。おねじの強度区分と径に鑑みて、適切なめねじを選ぶことが必要です。
高強度製品のご紹介
SUS304CUNファスナー
SUS304CUNファスナーは、JIS規格以上の高強度ステンレスファスナーです。強度はA2-90、A2-100程度であり、メンテナンス・部品交換頻度の削減を実現し、お客様製品の長寿命化に貢献します。
詳しくはSUS304CUNファスナー製品ページをご覧ください。
14.9キャップ
14.9キャップは、JIS規格以上の高強度の六角穴付きボルト(キャップボルト)です。
航空宇宙用の規格のねじ形状を採用することで、対疲労性の向上を実現しました。
【特徴】
・締結力やねじ精度の向上によりゆるみは発生しにくくする。
・小さいサイズで大きな力に耐えられるため、製品をコンパクトにできる。
・14.9の高強度でありながら、10.9並の靭性がある。
詳しくは直接お問合せください。
強度についてのご相談
ここで紹介したことは、ねじの強度の一部です。実際にねじを選定する場合にはいろいろな条件を含めて検討する必要があります。強度に限らず、どのようなねじを選べばいいか迷った場合は、お気軽にお問い合わせください。