
手元のボタンキャップ、皿キャップと同じものが欲しい!各所で調べたり、お問い合わせをしたり。ねじの呼び径と長さをもとに見つけられたその皿キャップやボタンキャップは、手元の製品と本当に同じものでしょうか。実はボタンキャップ(六角穴付きボタンボルト。以降、ボタンキャップとする)・皿キャップ(六角穴付き皿ボルト。以降、皿キャップとする)には、SSS規格とISO規格(JIS規格)の2種類の規格が存在しています。呼び径と長さが一致していても、規格の違いから形状が異なる製品を購入してしまうかもしれません。本記事では、SSS規格の基礎知識を分かりやすく解説し、ボタンキャップや皿キャップといった具体的な製品におけるSSS規格とISO規格における違いを紹介します。製品選びで迷っている方は、SSS規格の特長を理解することで、より確実にミスのない選択が可能になります。この記事を通じて、SSS規格に関する疑問を解決し、最適な製品を選ぶための知識を深めてみませんか。
SSS規格とは何か?ISO規格(JIS規格)との違い
SSS規格の歴史と背景
SSS規格(スリーエスきかく)とは、日本ソケットスクリュー工業協同組合により制定されているねじの規格です。ボタンキャップ、皿キャップなどの規格を定めています。JIS規格(日本産業規格)は国が規定する「国家規格」、ISO規格は国際標準化機構が規定する「国際規格」であるのに対し、SSS規格は業界団体による「団体規格」です。
昔のJIS規格にはボタンキャップや皿キャップの規定がありませんでした。他方で、ねじメーカーが所属する日本ソケットスクリュー工業協同組合が規格化し、各ねじメーカーがこれに則り製造していました。JIS規格、ISO規格に「六角穴付きボタンボルト」や「六角穴付き皿ボルト」の規定がある現在でも、これらとは寸法が異なる別の規格として存在し、製造が続いています。
ボタンキャップにおけるSSS規格
上記の通り、ボタンキャップ・皿キャップには、SSS規格とISO規格(JIS規格)の2種類の規格で作られた製品が存在しています。このため呼び径と長さが一致していても、規格の違いから形状が異なる製品を購入してしまう可能性があります。具体的にはどのような違いがあるのか、解説します。
ボタンキャップの用途と利点
ボタンキャップは、主に機械や構造物の組み立てに使用される六角穴付きボルトの一種で、その名前の通り、頭部がボタンのように丸みを帯びた形状をしているボルトです。この形状により、ボタンキャップは安全性が求められる場所や、見た目が重要な場面で重宝されます。特に、頭部が露出する組み立てでは、滑らかな形状が事故防止に役立ちます。さらに、ボタンキャップは六角レンチを用いて簡単に取り付け・取り外しができるため、メンテナンスの際にも便利です。


SSS規格品とJIS規格品の違い
通称は同じボタンキャップですが、その寸法には細かな違いがあります。例えば、頭部の高さについて。JIS規格よりもSSS規格の方が高く設定されています。例えばM6の場合、SSS規格が4mmであるのに対し、JIS規格では3.3mmと実に0.7mmほどの差があります。ただし、M16はSSS規格が8.5mm、JIS規格が8.8mmと、JIS規格の方が高く設定されています。
こういった細かな規定の違いが、両者の形状の違いを生んでいます。サイズによっては頭部の径が異なるため、頭部と他の部分との干渉がないか、選定の際に確認しておく必要があるでしょう。もしお手元のねじと同じ商品をお求めの場合は、寸法をしっかりと確認して選択してみてください。
ボタンキャップ JIS規格/SSS規格 比較表
(単位:mm)
呼び径 | 頭部高さ JIS (最大) | 頭部高さ SSS (基準寸法) | 頭部外径 JIS (最大) | 頭部外径 SSS (基準寸法) |
---|---|---|---|---|
M3 | 1.65 | 2 | 5.7 | 5.5 |
M4 | 2.20 | 2.6 | 7.60 | 7.5 |
M5 | 2.75 | 3.4 | 9.50 | 9.5 |
M6 | 3.3 | 4 | 10.50 | 10.5 |
M8 | 4.4 | 5 | 14.00 | 14 |
M10 | 5.5 | 6 | 17.50 | 18 |
M12 | 6.60 | 7 | 21.00 | 21 |
M16 | 8.80 | 8.5 | 28.00 | 28 |
皿キャップにおけるSSS規格
皿キャップの用途と利点
皿キャップはその名前の通り、頭部が皿のような形状をしている、六角穴付きボルトの一種です。この頭部形状により、施工面をフラットに仕上げることができるという利点があります。見栄えが良く、安全性が求められる場面で多用されます。皿キャップを使用することで、製品の表面が滑らかになり、突起による引っかかりや怪我を防ぐことができます。ただし、被締結部材にはこの頭部が埋まる座繰り加工が必要になるため、注意が必要です。なお、ボタンキャップと同じく六角穴がついているため、六角レンチを用いて簡単に取り付け・取り外しが可能です。

SSS規格品とJIS規格品の違い
規格寸法の定め方に違いがあるため一概に比較はできませんが、例えばM6の場合、頭部高さはSSS規格品が最大3.3mm、JIS規格品が3.72mmでSSS規格品の方が小さいと言えます。一方、皿形状の角度はどちらも90°~92°と規定されており共通です。特に皿キャップは、座繰りの設計や施工を誤ると頭部が相手部材の面から飛び出すため、機材の動作に問題を引き起こしたり、引っかかりなどの危険性をかえって増長してしまいます。ねじの呼び径や長さだけでなく、皿形状の寸法に注意して商品を選ぶ必要があります。もしお手元のねじと同じ商品をお求めの場合は、寸法をしっかりと確認して選択してみてください。
皿キャップ JIS規格/SSS規格 比較表
(単位:mm)
呼び径 | 頭部高さ JIS (最大) | 頭部高さ SSS (基準寸法)※1 | 頭部外径 JIS (理論寸法最大) | 頭部外径 SSS (基準寸法/最大) |
---|---|---|---|---|
M3 | 1.86 | 1.7 | 6.72 | 6 |
M4 | 2.48 | 2.3 | 8.96 | 8 |
M5 | 3.1 | 2.8 | 11.20 | 10 |
M6 | 3.72 | 3.3 | 13.44 | 12 |
M8 | 4.96 | 4.4 | 17.92 | 16 |
M10 | 6.2 | 5.5 | 22.40 | 20 |
M12 | 7.44 | 6.5 | 26.88 | 24 |
M16 | 8.8 | 7.5 | 33.60 | 30 |
まとめ~ねじをお探しなら~
SSS規格のボタンキャップや皿キャップに関する情報をお伝えしてきましたが、いかがでしたか?これらの製品を選ぶ際には、規格の違いが形状や適合性に影響を与えることを理解することが重要です。特に、SSS規格とISO規格(JIS規格)の違いを把握することで、間違った製品を購入するリスクを減らすことができます。次に製品を選ぶ際は、まずは、お手元の製品の規格を確認し、必要な規格に合った製品を選ぶようにしましょう。これを機会に、SSS規格についてさらに知識を深めると、より安心して製品選びができるでしょう。ぜひ、この記事で学んだことを活かして、最適なボタンキャップや皿キャップを見つけてください。
また、実際にねじを選定する場合にはいろいろな条件を含めて検討する必要があります。寸法に限らず、どのようなねじを選べばいいか迷った場合は、お気軽にお問い合わせください。