
現代の産業界で欠かせないねじ製品。その中でも「六角ボルト」と「六角ナット」は、様々な機械や構造物に使用されています。JIS規格としては、「本体規格」と「附属書」の2種類が存在している状況が長く続いてきましたが、2024年6月に、日本ねじ研究協会より『JIS B 1180 及び JIS B 1181 における JIS としての附属書(規定)の廃止理由及び規定内容の移行に関する注意事項について』で、現行規格のJISとしての附属書(規定)を廃止すること、JISマーク認証の猶予期間は、改正規格の公示後、3年として通達がありました。「本体規格」と「附属書」の違いを正しく理解し、適正な製品を選ぶ為に、この記事ではJIS本体規格への移行が求められる理由と問題点を詳しく解説し、お客様の製品選択に役立つ情報を提供します。
JIS本体規格と附属書の違いについて
JIS本体規格品と附属書品の違いは、主に規格の適用範囲と標準化の観点から考えられます。本体規格品は、国際標準であるISOに準拠しており、国際市場での互換性と競争力を高めることを目的としています。これに対し、附属書品は、従来から運用されている国内仕様に特化している為、グローバルな市場における適用が難しい場合があります。具体的な違いとしては、強度区分や寸法の統一が挙げられ、本体規格品ではこれがISO基準に合わせられています。また、附属書品は、ボルト・ナット結合における破壊モードを考慮した設計となっていないため、信頼性が確保されているとは言えません。対する本体規格ではボルトとナットの強度区分毎に組み合わせが決められており、締結の安全性、信頼性は増すと考えられます。しかしながら、現状の問題点としては、国内で流通する六角ボルトの多くは強度区分4.8ですが、対応する本体規格六角ボルト部品等級A、Bには強度区分4.8が規定されていません。ここがクリアされれば、JIS規格から附属書の廃止は進展することが予想されます。
JIS本体規格品と附属品の具体的な違い
①本体規格の六角ボルト・ナットには部品等級A、B、Cがある。
部品等級は、製品の寸法、形状、仕上がり状態によって区別したものです。幾何公差も設定され精度レベルが上がっています。
②本体規格のナットは、スタイル1(並高さナット)、スタイル2(高ナット)がある。
附属書品は、ナットの呼び高さが0.8d(1種、2種)としているが本体規格はスタイル1 約0.9d スタイル2 約1.0dと高くなっています。
③本体規格では、六角ボルトの強度区分によって六角ナットとの組み合わせが決まっている。
④本体規格品と附属品の寸法の違い 六角ボルト、ナットで二面幅が異なるのは4サイズある。
二面幅S基準寸法が異なるサイズ | ||
ねじ(並目) | 本体規格 | 附属書 |
M10 | 16 | 17 |
M12 | 18 | 19 |
M14 | 21 | 22 |
M22 | 34 | 32 |
⑤本体規格の六角ボルト部品等級A、Bには座面にワッシャーフェイス(座)がつく。
ワッシャーフェイスは、座面と締結物との間に均一な摩擦力を発生させ、適切な軸力を保持する目的があります。

⑥本体規格では、ステンレス鋼六角ボルトにも強度区分が規定されている。
本体規格(IS)品頭部刻印例

附属書JA品頭部刻印例

JIS本体規格の概要
JIS本体規格は、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の中核を成すもので、製品の品質や安全性を確保するための基準を定めています。この規格は、製造業や流通業において製品の均一性と互換性を保証するための重要な役割を果たしています。JIS本体規格は、国際標準化機構(ISO)の基準と整合性を保ちながら、日本国内の産業に適合するように設計されています。
JIS附属書の役割と今後
JIS附属書は、JIS本体規格の補完的な位置づけとして重要な役割を果たしています。附属書は、特定の用途や条件に対応するために、標準化の枠組みを超えて柔軟に対応できるよう設計されています。これにより、企業は迅速かつ効率的に製品開発を進めることができ、競争力を高めることができます。ただし、附属書の利用には将来的な廃止の可能性を考慮する必要があり、企業は長期的な視点で本体規格品への移行を検討することが求められます。これにより、持続可能な製造・供給体制の構築が促進され、業界全体の標準化が進むことが期待されています。
市場の動きについて
現状としては、六角ボルト、六角ナットのJIS本体規格品を在庫ラインナップとしてすぐに提供できるメーカーは少ない状況です。反対に、JIS附属書の在庫が市場を席捲している為、こちらを使用されるケースも多く見受けられます。JIS本体規格品については、特定のユーザー向けとして製作することが可能です。ご利用の際には、お見積りから確認させて頂きますので、お気軽にお問合せ下さい。