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ゆるみと破断
ゆるみ

 ねじのゆるみは『軸力が締め付け時よりも減少すること』と定義されています。ゆるみが発生するとねじの機能が果たせなくなり、最終的に大きな事故につながってしまう場合もあります。これらのゆるみを防ぐために、座金やゆるみ止めナット、接着剤などが使用されます。ゆるみは様々な原因が重なって発生します。その原因を大きく分類すると「回転ゆるみ」と「非回転ゆるみ」の2つに分けることができます。


【 回転ゆるみ 】

ねじに振動や衝撃が加わり、戻り回転することで発生するゆるみです。 (例:線路のレールが振動することでボルトが徐々に回転し、ゆるむ)→対策例:ねじが直接振動を受けないような設計にする

【 非回転ゆるみ 】

ねじが回転せずに発生するゆるみです。主に4つの原因があります。

初期ゆるみ

相手材の表面のわずかな凹凸が、ねじを締め付けたときに馴染むことで発生するゆるみです。(例:自動車のタイヤ装着後、しばらく走行するとボルトがゆるむ)→対策例:増し締めをする、接触面の凹凸を無くす

陥没ゆるみ

座面がねじの力に耐えきれず、陥没してしまうことで発生するゆるみです。(例:金属より木の硬度が低いため、線路の枕木にボルトが沈んでゆるむ)→対策例:トルクの管理、沈まない材質を選ぶ、座金の使用

塑性変形によるゆるみ

ねじの限界を超える力が加わることによるゆるみです。(例:ジェットコースターの大きな衝撃でボルトがゆるむ)→対策例:ねじの限界を超える設計をしない、強いボルトを使用する

温度によるゆるみ

温度の変化による膨張、収縮で発生するゆるみです。(例:夏と冬の寒暖差、朝晩と日中の寒暖差など)※熱膨張率の差で発生するため、ねじと被締結材が同素材の場合は発生しないと言われています。(同温度で同じだけ収縮・膨張するため)→対策例:膨張率を加味した設計を行う、適正な温度での締付・使用
破断

 ねじが壊れてしまうことを破断といいます。破断の原因として主に以下の3つのパターンがあります。


延性破壊

ねじが引っ張りの力に耐えきれず、破断する現象です。(例:ねじを必要以上に締め付けすぎること(オーバートルク)で破断してしまう)

疲労破壊

ねじに変動する荷重がくり返し加わることによってゆるみ、一部に非常に微細な亀裂が入り、それが進展※1していくことによって突然破断する現象です。(例:定期点検を怠ったため、ジェットコースターのボルトが破断し、脱線してしまう)

遅れ破壊

ねじに一定の力が加わっている状態で突然破断する現象です。代表的な例として、ねじ内部に水素が浸入・吸蔵され、脆くなってしまう水素脆化がありますが、その完全なメカニズムはまだ解明されていません。(例:橋に使用されていた高強度のボルトが突然破断する)