
現代の製造業では、軽量化の観点からアルミの需要が高まっています。それに伴い、アルミの表面処理にも新技術が、求められており特に、耐久性や美観を保ちながらコスト低減が可能な新しい表面処理が必要とされています。この記事では、最新の技術「AlooH®」に焦点を当て、アルミの表面処理に革新をもたらすその特性ついて詳しく解説します。
アルミ表面処理とは
アルミ表面処理とは、アルミ素材の表面特性を改善し、耐久性や機能性を向上させるための一連の技術・工程を指します。アルミは軽量で耐食性が高い特性を持つ金属ですが、そのままでは使用環境に応じた性能を十分に発揮できないことがあります。そこで、表面処理を施すことで、さらなる耐食性、耐摩耗性、装飾性を付与し、使用目的に応じた特性を引き出します。
代表的なアルミ表面処理の一つに「アルマイト処理」があります。これは、アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させることで、素材の耐食性を向上させる方法です。酸化皮膜は硬く、また染色が可能であるため、装飾性も付与することができます。アルマイト処理により、アルミ製品はより長寿命で美観を保つことが可能になります。一方で、治具へのラッキング、水洗い、封孔処理など、多数の人の手が関わる工程が発生する為、一定のコストがかかってしまう問題があります。
AlooH®の概要
AlooH®は、株式会社八幡ねじと芝浦工業大学が産学連携で共同開発した先進的なアルミ表面処理技術です。この技術は、従来の表面処理技術が抱えていた耐食性と生産性の課題を一挙に解決する画期的な方法です。AlooHは、溶剤を一切使わず、水のみを使用した水蒸気で処理を行います。従来の処理とは異なり、高温・高圧反応容器を活用して、結晶成長に関わる化学反応を制御することで金属基材上に、耐食性皮膜を形成、又、基材のミクロ組織を改変させる技術です。
AlooH®の特徴
①均一な皮膜
AlooH®は、複雑な形状の部品に対しても均一に皮膜を形成できるため、部品全体の耐久性が向上します。この均一な皮膜は孔食を防ぎ、長期間にわたって素材の品質を保つことが可能です。アルマイト処理は、電解液に浸して電気を流す為、電極に遠い部分や、電解液の濃度のバラツキにより膜厚が安定しません。特に袋穴の底部への皮膜はつきにくく、ここから錆が発生することが多いです。
②高強度
AlooH®は、高温・高圧反応容器で処理を行う為、同時に熱処理を施すこととなり、表面硬度が未処理品の2.3倍、内部硬さが1.5倍に硬くすることが可能です。その為、素材そのものの性能を損なうことなく、長期間の使用に耐える製品を生み出すことができます。
③処理工程が少ない
アルマイト処理は、治具へのラッキング、脱脂処理、水洗い、デスマット処理、封孔処理など、人の手が必要な多数の工程があります。 AlooH®は、前処理なし、人の手が必要な工程が少ないところが特徴です。但し、処理時間は長く形状にもよりますが、最低、8時間必要です。

耐食性
AlooH®の耐食性試験として複合サイクル試験(JASO M609)とキャス試験(JIS Z2371)を実施しております。
複合サイクル試験:55サイクルで錆発生なし
キャス試験:8時間で錆発生なし

まとめ
この記事では、アルミの表面処理に革新をもたらすAlooH®技術について詳しく解説してきました。AlooH®は、環境に優しく、耐食性と高強度を兼ね備えた新しい表面処理技術です。特に、均一な皮膜形成が可能で、複雑な形状にも対応できる点が大きな魅力です。アルミの表面処理における課題を解決しつつ、コスト効率も向上させることが期待されます。
AlooH®の試作についても随時承っております。お気軽にお問合せ下さい。
・主な対応材質 A6061 ADC12(アルミダイキャスト材も対応可)
・現在処理可能な大きさは、Φ70×300㎜となっております。こちらの大きさまででご依頼お願い致します